本学教授の岡耕平先生と本学修了生である釣由美さん(12期生)との共同研究の成果が、国際会議 HCII 2026(Human-Computer Interaction International)で発表され、SpringerのLecture Notes in Computer Science に収録されました。 Oka, K., & Tsuri, Y. (2026). Everyday Memory Difficulties and Cognitive Offloading in Home-Dwelling Older Adults: A Qualitative Study. In M. Kurosu & A. Hashizume (Eds.), Human-Computer Interaction. HCII 2026. Lecture Notes in Computer Science, vol. 16701 (pp. 561–577). Springer, Cham. https://doi.org/10.1007/978-3-032-29583-5_34 加齢にともなう記憶の変化は、必ずしも生活の破綻に直結するわけではありません。多くの高齢者は、記憶が変化してもなお自宅での生活を続けています。ではどうやって続けているのか――その適応の中身は、実際の生活場面ではあまり詳しく記述されてきませんでした。本研究は、(1) 日常生活で実際に生じている記憶に関する困りごとを洗い出し、(2) それを記憶システム(作業記憶・意味記憶・エピソード記憶・手続き記憶・展望記憶)ごとに分類し、(3) それに対して高齢者本人と家族介護者がどのような認知的オフローディング(記憶を頭の外に預ける方略)を使っているかを整理することを試みたものです。 在宅高齢者13名(73~99歳、平均85.2歳)とその家族介護者13名に半構造化面接を行いました。あわせてMMSE-J、Barthel Index、Lawton IADL尺度で認知機能と生活機能を把握しています。面接の逐語録から、「どんな困りごとが、どんな対処や環境調整と結びついているか」を一組にした「生活エピソード」を抽出し、質的内容分析を行いました。最終的に254のエピソードが得られています。 結果、最も多かったのは展望記憶(これからやることを覚えておく記憶)の困難で全体の43.7%、次いで手続き記憶の困難が28.7%でした。用いられていた方略は、外部化(メモや置き場所の工夫など)が29.5%、他者への委託が27.2%、習慣化が17.3%の順で、一方、デジタル機器や支援機器による認知の拡張はわずか3.1%にとどまりました。さらに、ひとつの困りごとがひとつの方略で解決されているケースはほとんどなく、道具・生活習慣・人の支援が何層にも重ねられることで成り立っていました。 この結果が示しているのは、支援技術を単体で持ち込んでも使われにくい、ということです。在宅生活には、すでに道具と習慣と人間関係でできあがった「オフローディングの生態系」があり、新しい技術はその中に組み込まれてはじめて機能します。在宅ケアや支援技術の設計は、単独の機器の導入を前提とするのではなく、この既存の仕組みと日々の段取りにどう接続するかを起点にすべきだと考えられます。 本研究はJSPS科研費 22K12121 の助成を受けたものです。
本学教授の岡耕平先生と修了生の釣由美さん(12期生)との共著論文が学術誌「Human Computer Interaction」に掲載されました。
2026.9.11
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