本学の修了生 野瀨珠美さん(11期生)の研究発表が、第37回日本手術看護学会年次大会において優秀演題に選ばれました。
野瀨さんの研究テーマは、「手術室看護師による器械出し看護の行動分析-専門的知識に裏付けられた行動の探索-」であり、滋慶医療科学大学大学院の元飛田伊都子特任教授、滋慶医療科学大学大学院・滋慶医療科学大学の戸田満秋准教授の指導によるものです。
―器械出し業務を担うエキスパート看護師の育成の難しさに注目した研究―
野瀨さんは、手術室における器械出し看護師を育成するのに3年以上を要する現状を鑑み、新人看護師とエキスパート看護師のそれぞれの器械出しの際の行動の特徴を明らかにすることに注目しました。さらに、それが看護師の教育プログラム作成に繋がることを目指して本研究に取り組みました。心臓血管外科手術が行われる手術室に小型カメラを設置し、皮膚切開から大動脈遮断までの時間を1秒毎の行動単位で分析し、新人看護師とエキスパート看護師のそれぞれに特徴的な行動があることを明らかにしました。
さらに、本研究は2022年度日本手術看護学会より拝受した手術看護領域等に対する研究助成により実施することができました。
手術室看護師による器械出し看護の行動分析-専門的知識に裏付けられた行動の探索-.
野瀨珠美, 飛田伊都子, 戸田満秋.日本手術看護学会誌 19(1) 96, 2023.
―手術室認定看護師として新たな教育方法との出会い―
野瀨さんは「この度、日本手術看護学会年次大会で優秀演題を受賞することができ大変光栄に思っております。今回の受賞は熱心にご指導をいただきました飛田伊都子元特任教授と戸田満秋准教授のご尽力のおかげであり、この場を借りて感謝と共に厚く御礼申し上げます。長年手術室に従事する中で、器械出し看護師の育成は常に課題であり、今回行動分析学という学問を手術看護の世界に投じることで、暗黙的と言われている器械出し看護師の技術を教育するうえで一つの光が見えてきました。今後も分析を継続し、手術看護の質の向上に貢献して参りたいと思います。」と述べています。
―手術看護領域の教育に一石を投じる研究になると期待―
本研究の指導を担った滋慶医療科学大学大学院の飛田伊都子元特任教授は「本研究は、野瀨さんが大学院入学時から課題としていたテーマでした。手術室の器械出し看護師を育成するのに長期間が掛かる一方で、エキスパート看護師が行う器械出しは新人看護師とどのように異なるのか、明確に言語化されていないため、教育プログラムを作成することが難しいということでした。エキスパート看護師と新人看護師の行動の違いが明らかになれば、教育プログラム作成の手掛かりになるのではないかと思い始めた研究です。病院勤務をしながらビデオ映像の分析を並行させるのは容易ではなかったと思いますが、見事にやり遂げてくれました。この研究が、教育プログラム作成に繋がることを切に願います。」と述べています。