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住友順子さん(6期生)が医療の質・安全学会の「第8回上原鳴夫記念研究奨励賞 若手奨励賞」を受賞しました。

2022.12.28

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TeamSTEPPS®の「チェックバック」 遵守率向上を目指した介入の効果 

看護師間における行動分析学的教育プログラムの 有効性の検証

本学の修了生 住友順子さん(6期生)が、医療の質・安全学会第8回上原鳴夫記念研究奨励賞若手奨励賞を受賞しました。上原鳴夫記念研究奨励賞は、わが国の医療の質向上、および医療の質・安全学会の設立に多大な貢献をされた故・上原鳴夫先生を記念し、医療の質や安全領域における若手研究者の育成を奨励することを目的に設けられたものです。

住友さんの研究テーマは、『TeamSTEPPS®の「チェックバック」 遵守率向上を目指した介入の効果 −看護師間における行動分析学的教育プログラムの有効性の検証−』であり、同大学院の飛田伊都子特任教授の指導によるものです。

左から松村由美先生(医療の質・安全学会理事長)、寺井美峰子先生(第17回医療の質・安全学術集会大会長)、住友順子氏、長島久先生(第8回上原鳴夫記念若手研究奨励賞審査委員長)

―チェックバック(復唱)というシンプルな行動が人はなぜできないのかに注目した研究

 チームワークを高めて医療の質と安全性の向上を目指す方法として米国国防総省の研究助成により、米国の医療研究・品質調査機構(Agency for Healthcare Research and Quality)協力のもとTeam Strategies and Tool to Enhance Performance and Patient Safety(TeamSTEPPS®)という戦略が開発されました。このTeamSTEPPS®の有効性は様々な側面で評価されていますが、チェックバック(復唱)に関しては評価されておらず、さらに復唱するというシンプルな行動であるにも関わらず臨床現場で遵守されていないことが指摘されていました。なぜこのようなシンプルな行動が遵守できないのかというところに注目したのが住友氏です。その解決方法に行動分析学という心理学を用いて人の行動変容を導くプログラムを開発し、その有効性を検証しました。住友氏は、当該研究で滋慶医療科学大学院大学(現 滋慶医療科学大学大学院)の修士号を取得し、2021年医療の質・安全学会誌に原著論文として掲載されました。

TeamSTEPPS®の「チェックバック」遵守率向上を目指した介入の効果 看護師間における行動分析学的教育プログラムの有効性の検証.住友順子, 飛田伊都子, 魚住真生, 辰巳陽一, 小川正子, 中山昌美.医療の質・安全学会誌 16(3) 312-321 2021.

授賞式にて

―看護管理者として新たな教育方法との出会い―

 住友さんは「この度、医療の質・安全に多大なる貢献をされました上原鳴夫先生を記念した、このような素晴らしい賞を受賞することができ大変光栄に思っております。看護管理者として、教育される側の性格特性に着目するのではなく、行動に着目し変容を目指すことができる行動分析学との出会いは、人生の宝物であり、現場の疑問を、研究を通して解決する方法を見出す経験は、自身にとって人生の転機となりました。今後も、この賞に恥じぬよう、臨床現場で生じる様々な問題事象を解決する機能を分析し、医療の質・安全を担保する役割を担って参りたいと思います。」と述べています。

左から東辻保則氏(7期生)、佐々木雅子氏(5期生)、飛田伊都子特任教授、住友順子氏、小川正子氏(2期生)、髙野佳子氏(5期生)、中村かおる氏(10期生)

―医療の安全を行動的に解決するアプローチを評価いただいたことに感謝―

 本研究の主指導教員である飛田伊都子特任教授は「本研究は、住友さんが大学院入学時から抱いていた研究テーマです。このような研究に相性が良い行動分析学を提案したらすぐに興味をもってくれました。研究が進む中で、対象者が行動変容した時の住友さんの興奮した声を今でも鮮明に覚えています。患者の安全を守りたいという思いで真摯に取り組んでくれました。一言の愚痴も言わず、膨大なデータを丁寧に分析してくれました。そんな彼女の努力が評価され本当に嬉しく思います。また、このような行動的アプローチによる実験研究を評価いただいた医療の質・安全学会関係者ならびに審査委員の先生方に深謝申し上げます。」と述べています。