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06.医薬品安全管理学 ― 大石教授

医薬品は、医療・治療に必要不可欠なものとして扱われています。医薬品の研究・開発の成果が医療の進歩を招き、治療効果によって人の生命を守ってきた、といっても過言ではないでしょう。その一方で、医療事故のなかで、医薬品に関するものが過半数を占めているのも事実。それだけに、病院、医療従事者にとって医薬品の取り扱い「安全確保」は重要課題となっています。

そこで、大石雅子教授に「医薬品安全管理学特論」の授業内容や指導方針とともに「くすりのリスク」について聞きました。
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―問題点を見つけ、議論を通じて解決―

―授業の主な内容、進め方についてお話ください。

医薬品を特徴付けるのは、きちんと検証された薬理効果を持つ“モノ”として扱われることです。医薬品の安全管理は、“安全に効果を発揮するように作られているか”、“適切な方法で使用されているか”、“医療者や患者によって正しく使用されるか”―など、多様な要素を含んでいます。 こうした数々の特徴を解説して、安全管理の重要なポイントを明らかにしたいと思っています。授業では受身ではなく、自ら問題点を見つけ、ディスカッションを通じて解決策を探るというプロセスを大切にします。

―大学院生にとって、学びの重要なポイントとは何でしょうか。

医薬品安全管理の歴史や体制整備、病院薬剤部門・病棟・在宅医療など様々な場所での安全管理の実際業務、事故事例といったテーマを取り上げます。また、医薬品の定義、薬物動態、ハイリスク薬の副作用や相互作用の解説、医薬品情報の収集法、取り扱い方などについても基礎的な知識を習得し、何に注意すべきかをつかむことが重要です。

―大石先生は、大学病院の薬剤部で勤務されていました。医療現場に精通されているわけで、この経験を生かして授業を通じて院生の指導にどう役立てていきますか。

何によらず、リスクを予測するには、概念的な理解と現実が結びついていることが重要です。現場で起こることをできるだけ生々しく伝えることが、院生の経験値を上げる一助になると考えています。動機付けをして、活発なディスカッションを行って、医薬品安全管理の要点を共に考えていきます。

―医薬品の過誤事例の中では、取り扱いに関するヒューマンエラー、とりわけ伝達ミスが多いわけです。医療安全の観点から、この“防止策”について、どのようにお考えですか。

医薬品を取り扱う上でのヒューマンエラーは簡単には減少しないのが現実ですが、これまでの事例を糧にして、様々な方策が立てられています。それらの事例を知り、丁寧に解説することで特徴をつかんで、リスク回避策を立てることが大切です。また、概念的な理解を深めることにより、普段から“未然防止型の発想”を培うことが肝要です。

―「くすりはリスク」ということですが、どのようなリスクがあって、主としてくすりを扱う薬剤師あるいは看護師は、リスク回避のためにどのような注意が必要ですか。

薬剤の複雑さについての認識不足から思わぬことが起こります。薬剤使用時に注意すべきことを挙げてみましょう。
  • 次々に新しい薬剤が発売されるので、知識習得、更新を怠らない。
  • 同じ成分でも用法・用量、適応、注意点などが異なる場合がある。
  • 外観、名称が類似する上、複数規格を有する薬剤が多い。
  • 後発薬が増加して、名称の混乱がある上、切り替え時にリスクが生じる。
  • 慣れない薬剤を扱う場合があり、リスクに気づかないことがある。
  • 変更が多く、指示の伝達には細心の注意を要する。今後、地域包括が進むと複数施設を利用することが多くなり、採用薬剤や規格が異なるうえに、携わる医療者が多くなるので、情報伝達にはさらに注意を要する。

 

終わりに、クスリのリスクを軽減し、省力化にもつなげるためには、ITの活用が欠かせないでしょう。また、薬のリスクマネージャーとしての薬剤師の専門職能を十分に活かすことをお勧めします。職種内ばかりでなく、職種間での直接コミュニケーションを重視することも大切です。本学での貴重な多職種共学の機会を活かし、タテヨコ連携の重要性とその構築方法も学んでいきましょう。

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