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No.13
医療安全における新しい考え方

医療安全における新しい考え方

滋慶医療科学大学院大学
教授(医学博士)

江原 一雅

医療において事故を防止するためには、患者の安全を最優先し、人の注意には限界があるという前提で対策を立てなければなりません。そのためには、認知心理学や他の産業界の安全対策を導入する必要があります。

エラーを防止するためには、まず、従来行われていたような、個人を非難するパーソン・アプローチから脱却し、自発的にエラー報告が行われるような安全文化を醸成しなければなりません。そのうえで、エラーに至った潜在的な要因を分析して再発防止策を策定する、学習型対応に転換すべきです。

また近年、航空業界において、事故の原因には操縦技術などの技術的要因より、コミュニケ―ション、状況判断など、ヒューマンファクターズといわれる人的要因が大きいことが明らかにされました。これらをノン・テクニカルスキルと総称し、あらゆる状況においてチームとして望ましい結果を得るために、個人としての限界をカバーしながらチームとして働く、チーム訓練が医療にも導入されました。特に、患者もチームの一員として医療に参加することが求められています。

さらに、質の高い医療を提供するためには、安全性を高めることも重要です。医療機関は自らの医療の安全性について情報を収集し、組織として質の向上、安全性の向上に努めることが肝要です。

私どもの医療セーフティマネジメント学はこのように、3つの軸足を基本として、いかにして医療事故を防止するかその方策について学生とともに国際的な視点から研究に励んでおります。

医療において新しい安全文化を醸成するために

重要ポイント

  • (1)自発的にエラーを報告し、エラーから学ぶ、ヒューマンファクターに基づいた学習型の対応に転換する
  • (2)患者さんも含めた、チームとして活動できる体制作りを行う
  • (3)組織として医療の質の評価を行い、その向上に取り組む

江原 一雅 画像

滋慶医療科学大学院大学
教授(医学博士)

江原 一雅 (えはら・かずまさ)

プロフィール

1949年生まれ、大阪市出身。 1975年神戸大学医学部卒、医師資格取得。82年神戸大学大学院医学研究科博士課程単位取得、90年学位(医学博士)取得。米国フロリダ州マイアミ・マウントサイナイ病院ボームリッター核医学研究所研究員などを経て、96年神戸大学医学部脳神経外科学講座助教授、2000年同大学医学部附属病院総括リスクマネージャー危機管理室副室長、10年同大学大学院医学研究科外科系講座教授。11年本学教授。神戸大学大学院医学研究科客員教授。
著書に「医療事故初期対応」(医学書院、2008年)、「脳神経外科学大系第7巻脳腫瘍Ⅱ」(中山書店、2004年)他。日本脳神経外科学会学術評議員、医療の質・安全学会プログラム委員、医療事故・紛争対応研究会機関誌編集委員長などを務めている。

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