滋慶医療科学大学院大学の大学院生・畑中 翔太さん(9期生:医療法人 紀陽会 田仲北野田病院)を中心とする研究チームは公益財団法人大阪腎臓バンクから2020年度腎疾患研究助成を受けることになりました。
研究テーマは「Electrical Muscle Stimulation機器が維持透析患者の末梢・全身循環に与える影響の検討」で、本学教員の戸田満秋准教授、椿原美治特任教授の指導のもと遂行されている共同研究になります。
下肢動脈病変を持つ透析患者の末梢循環改善に着目した研究
本邦の透析患者数は年々増加しており(2017年末には約33万人)、下肢動脈病変の有病率も上昇し、四肢切断率は4.0%を占めるに至っている現状にあります。下肢動脈病変の治療としては運動療法の有効性が示されているのですが、足病変を有する患者には運動療法の実施は困難が伴うことが多くなっています。そこで今回の研究では脳卒中後リハビリなどの分野で有効性が報告されている電気的筋刺激(EMS)機器に着目し、下肢動脈病変を有する慢性血液透析患者の下肢血流改善に有効な補助療法となりえるかどうかを評価・検討するランダム化比較試験を行います。
慢性透析患者の下肢血流改善に資するデバイスの探求に邁進したい
畑中さんは「この度は公益財団法人大阪腎臓バンク様より腎疾患研究助成を賜ることとなり厚く御礼申し上げます。折しも世界的にCOVID-19の渦中であり、殊更医療業界の中で臨床研究を行うためのハードルを強く感じていたところでした。この現状で助成決定の通知を受け、研究内容や進行可能性を評価して頂けたと感じ、とても嬉しい限りです。透析を受けておられる患者数は年々増加傾向にあり、下肢動脈病変の有病率も増加している現状において、下肢血流改善のために様々な手法が探求されております。この研究によって、EMS機器が透析患者の下肢血流改善に有効な補助療法となり得る事が確認されれば、多くの患者さんへの恩恵となるものと信じています。EMS機器を貸与頂いたMTG社ならびに共同で研究・指導を頂いている本学の先生方や先輩方、また研究協力を快諾してくださった田仲北野田病院のスタッフ・患者会のご支援に応えるべく研究活動に邁進致します。」と決意を述べています。
下肢動脈病変をもつ透析患者さまのQOL向上に寄与しうる研究
主指導教員を務める戸田准教授は「公益財団法人から研究助成をいただけることは非常にありがたいことです。医療従事者として勤務しながら勉学・研究に励む大学院生が筆頭として遂行される研究に助成をいただけたことは大きな意味があると考えます。畑中さんは本学に入学され、透析治療も含めた患者さんの生活をより良くすることを目指す研究として本テーマに取り組んでいます。透析治療を受ける患者さんの生活の質と安全に寄与しうる研究となるよう、私も指導教員として本研究を支援する所存です。」と述べています。