2018年11月に刊行された雑誌「麻酔」2018:67号では、巻頭に特集「「新しい医療事故調査制度における事故調査」が掲載されています。
この特集は、本学の木内淳子学長・教授が責任編集したもので、「緒言とまとめ」も書いています。
木内学長・教授の「緒言とまとめ」では、日本麻酔科学会第64回学術集会(2017年6月開催)の会長企画シンポジウム『新しい医療事故調査制度における事故調査』において、法律家、麻酔科医、心理学者から報告された医療事故の原因究明と再発防止、新しい事故調査の視点などがまとめられています。
これらは2015(平成27)年9月から施行された医療事故調査制度の現状を踏まえて、分析・評価したものです。今後の課題として、医療事故調査のガイドラインが複数存在する現状を踏まえ、各医療機関がその規模や特徴をもとに、いずれのガイドラインに従って院内調査を行うかを判断することが重要であると結んでいます。
岡准教授は「新しい医療安全対策の視点」と題し、安全関連の学術領域における近年の安全研究の知見を整理しつつ、今後の医療安全領域における事故防止の方法について論じています。
安全に関する考え方に変化をもたらしたHollnagelは、「複数の不安全事象が同時に生起したことそのものが事故の原因である」と考え、従来の原因特定除去型の安全対策アプローチ(SafetyⅠ)よりも、不安全事象同時生起防止型の事前安全対策アプローチ(SafetyⅡ)の必要性を説きました。
これに対して岡准教授は、不安全事象の特定にはインシデントレポートのレベル0や1の事例を分析すべきであると提案しています。
そして、医療事故調査においては、ただ単に「何が原因だったのか」のみならず、「複数の原因がなぜ同日に生起したのか」という観点の分析が必要になると述べています。