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本学修了生の城戸眞由子さん(10期生)と本学教員の岡耕平先生の共著論文が医療マネジメント学会誌に掲載されました。

2025.12.17

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城戸眞由子・岡耕平(2025)電子カルテの指示読み取りシミュレーションにおける看護師の臨床判断プロセスの可視化. 日本医療マネジメント学会誌, 25(3), 193-199.


この研究は、仮想電子カルテによる医師からのオーダーを見て、看護師がどのような手かがりからオーダーを解釈し、何を考え、何を確認し、実際に何をしようとするのか、「指示受け」に携わる臨床判断の内容を明らかにすることを試みたものです。Zoomでのオンライン環境でオーダーを提示したのち、そのオーダーをどう読み取り、どう判断したか、「思考発話法」を用いてデータを取りました。思考発話法は「考えていることを全て言語化できるわけではない」という欠点があるのですが、今回は参加者が「あれを…」「そうだろうなと思って…」などといった指示語を用いたときにリアルタイムで実験者が「あれとは〇〇のことですか?」「そうだろう、というのは〇〇ということだろうということですか?」と確認することで、可能な限り思考内容の言語化ができるような工夫をしています。そしてこの発話内容をテキスト化し、テキストデータを用いた対応分析をクラスター分析によって、仮想電子カルテに意図的に仕込まれた情報の不備に気づいてうまく対応できた人と、できなかった人の違いを検討しました。

結果、仮想電子カルテに意図的に仕込まれた情報の不備に気づいてうまく対応できた人と、気づかず対応できなかった人の思考発話内容に違いがあることがわかりました。うまく対応できた人は情報の不備に「気づき」、それが正しいのかどうか「確認して解釈する」というプロセスが見られる一方で、うまく対応できなかった人は与えられた情報に対して正しく「反応する」プロセスのみを重視していました。これら結果は、看護師における臨床判断能力の教育に貢献できると考えられます。