7期生
竹久 志穂さん
勤務先 | 学校法人近畿大学 がんセンター 緩和ケアセンター |
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職種 | 看護長 |
2015年に副看護長として初めて病棟管理を任されるようになった部署は、病床の半分が個室で希望があれば診療科は問わず入院できるという特殊な病棟でした。病室ごとに診療科や主治医、入院する患者の疾患が違い、情報伝達に関するトラブルは日常茶飯事でした。最低限のルールを作り、患者ごとに異なるチーム医療を実施していくために各診療科のリーダー医師と話し合いをきっかけに医師・看護師に「お互い様」」という思いが芽生え病棟の空気が一変しました。こういった取り組みによる化学反応を経験し医療安全のマネジメントを学ぶことで更に管理がおもしろくなるのかなと感じたことが入学の動機でした。
入学後は、あらゆる職種の同期に恵まれ、休憩時間や帰宅後も情報交換や仕事の話題で盛り上がり、自分の知らない世界を知ると同時に、自らの視野の狭さを知ることができました。所属した研究室では認知心理学、安全心理学を学び、研究テーマでもある「チーム医療」、「コミュニケーション」について知見を深めました。これらが現在職務している部署でのがん患者の意思決定支援に日々役立っていると感じています。広辞苑では「意思決定」とは、ある目標を達成するために、複数の選択可能な代替的手段の中から最適なものを選ぶこととあります。現在私は、がん患者の目的に合わせて提案される複数の治療方針に対して、患者背景に合わせてご自身で大切にしたいことを叶えるための治療を取捨選択し、最適な医療を選ぶ作業を支援しています。大学院で学んだことを礎として、情報量が多ければ良いと言うわけではないことや育った文化によってどういった選択を好むのかを考慮し、患者に合わせた情報を提示することができるようになりました。研究においても、計画の段階から指導教員や共同研究者とディスカッションするために、自分の意見がブレないようにまとめること、実験のスケジューリングや実験協力を依頼するために誰にどの順番でネゴシエーションしていくかなどをまとめることは現場で活かされる作業であったと実感しています。また、在学中の研究で深めた「認知・判断」が、日々のがん看護の意思決定支援に深く関連していると気づけました。修了後は、日本肺癌学会や日本臨床腫瘍学会、患者会などで意思決定やチーム医療についてお話しする機会をいただいたり、がん看護学会で事例を発表したりしています。
何がなんでも2年間で修了するぞという思いで入学した大学院での生活は、瞬く間に過ぎて行きましたが私の大切な財産になりました。在学中は週に5日大学院に通い、できるだけ多くの知識を増やしたいという思いを理解し、毎日「看護長、そろそろ時間ですよ。帰れますか?」と送り出してくれた病棟スタッフ、毎日夜遅くまでメールで丁寧に相談に乗ってくださった指導教員にも万謝いたします。お陰様でディスカッションが好きになりました。